研究情報
私たちの研究室では、感覚プロセスと高次脳機能との関連、特に色と明るさの処理に着目しています。また、脳内で重要な役割を果たすipRGCの機能にも焦点を当てています。研究の目的は、感覚情報が脳内でどのように伝達され、統合され、表現されるかを理解することです。辻村教授とその共同研究者らは、ipRGCが明るさの知覚に寄与していることを初めて明らかにしました(T. M. Brown, S. Tsujimura et al. Curr Biol 22, 1134-1141 2012)。それ以来、多くの研究者がipRGCの明るさ知覚への寄与を実証してきました。ipRGCの明るさ知覚への寄与を示すことは、測光や測色にとって非常に重要であると考えられています。
研究
メラノプシン神経節細胞の研究
私たちは、色や明るさなどの感覚知覚情報処理と高次脳機能との関連性に着目しています。加えて、脳内で外界の光信号の符号化に関し重要な役割を担っているメラノプシン神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell:ipRGCs以下、メラノプシン細胞)の機能解明にも着目しています。網膜での処理が生体内でどのように処理・統合され、脳内でどのように表現されているのかという疑問に答えることが私たちの目標です。私たちは、心理物理学的手法と神経生理学的手法を用いて研究に取り組んでいます。私たちの眼球の網膜には、2種類の光受容器(錐体細胞、桿体細胞)が存在いています。この2つの光受容器のみによって、ヒトはものを見たり識別したりしていると長年考えられてきました。
しかしながら、3番目の光受容器であるメラノプシン細胞が発見されました。メラノプシン細胞はメラノプシンという光受容タンパク質を持つ細胞です。メラノプシン細胞の発見により、概日光制御や瞳孔光反射など、非撮像系経路(non-image-forming pathway)や撮像系経路(image-forming pathway)について根本的に見直されるようになりました。メラノプシン細胞は環境光を脳内で符号化する上で重要な役割を担っていると考えられています。環境光によって刺激されたメラノプシン細胞からの信号は、杆体や錐体といった古典的な視細胞からの信号とともに、非撮像系経路や撮像系経路の脳内機能に寄与しています。
私たちの研究グループでは世界で初めてメラノプシン細胞が明るさの知覚に寄与していることを発見しました。一方で、概日リズムの調節や瞳孔の対光反応、明るさの知覚等はメラノプシン細胞の機能のごく一部であり、メラノプシン細胞の機能はまだ他にもあるのではないかと考えられています。例えば、記憶や注意、気分、偏頭痛などにも影響するかもしれません。
学生の研究
実験心理学・脳神経科学
- メラノプシン神経節細胞の瞳孔径路への寄与の解明
- 色、輝度情報とメラノプシン神経節細胞との機能的関連性
- 光環境が概日リズムに及ぼす影響の解明
- ヒトの色の知覚メカニズムの解明
- ヒトの明るさ知覚メカニズムの解明
研究室での実験
Jetson Nano
実習では、NVIDIA製の小型のAIコンピュータボード(Jetson Nano)を搭載した自立走行ロボット「Jetbot」を使用して、ディープラーニングについて学びます。
下の動画では、学生がJetbotによる落下・衝突回避の学習を学ぶため、サンプルプログラムを用いたテスト走行を行っています。
機器
分光放射照度計
人間の目で見える光の領域380nm~780nm間で1nmピッチ毎の物理エネルギー量(絶対値)を測定します。またその値から計算にて高精度で輝度・色度・色温度・主波長等も算出されます。様々な実験装置のキャリブレーションに用いています。
分光放射照度計
分光放射照度計CL-500Aは、光の演色評価数、相関色温度、色度、照度(JIS一般形AA級)、暗所視照度、三刺激値、主波長刺激純度、ピーク波長、分光放射照度値(360nm~780nm1nmピッチ:外部出力のみ)の測定が可能な分光放射照度計です。
2次元色彩輝度計
RTC-21(2次元色彩輝度計)は、一般的なRGB三原色カメラでは捉えられない幅広い色域の色情報が取得できる、人の眼と等価な感度のXYZ表色系を採用したカメラです。取得した広色域・高色忠実XYZ映像をPCで確認できます。PCでのXYZ画像のファイル保存・分析が可能です。