講義メモ 2017.12.11 西部劇映画

テーマ 「西部劇について」 映像コンテンツ特論

「大列車強盗 活弁士の語りつき」1903年 アメリカ映画

 世界最初の西部劇映画であり、世界最初期のフューチャーフィルム。エディソン社(あの発明家の)の作製した映画。編集の概念の胎動でもあり、画面の奥行きを活かした撮影や演出やアクションシーン、列車の屋根での立ち回りなどが盛り込まれた作品。
ただし、西部劇映画が出来る前にもアメリカ文化にはワイルドウェストショーという演劇ねようなエンターテイメントが存在し、人気を博して居たことも忘れてはならない。つまりこう言うスタントショーやお芝居の元ネタがあって西部劇映画が生まれた。本作が西部劇映画の源流。

「駅馬車」1939年 アメリカ映画
 ジョンウェインがアメリカンヒーローとしてもっとも輝いていた頃の映画。また、パニックものの原型でもある。
疾走する場所や奇兵隊やインディアンの躍動感は秀逸。マッドマックス(特に2)はこの映画へのオマージュ。テーマ音楽は誰でも聴いたことがある筈。

「シェーン」1953年 アメリカ カラー映画
アランラッドの早撃ちアクション。もっとも基本的な、西部劇らしい西部劇映画。シェーンが悪の軍団を倒すのに発射する銃弾は僅かに4発。
戦いそのものではなく、そこに至る「家族」や「正義」「教育」をテーマに置く。
また、悪党一味との対決の場面の会話が秀逸。
シェーン曰く「いつまでもフロンティアじゃない。もう俺たちガンマンの時代は終わったのさ」
悪党「それじゃあ、お互い銃を店に預けて一緒に畑仕事でもするかい?」

Shane come back!! アメリカ映画は少年キャラクターの使い方がうまい。

「荒野の用心棒」1964年 イタリア映画
マカロニウエスタンの代表作。イタリア制作で撮影はメキシコでも西部劇と言うのかどうか。しかもストーリーは黒澤明の用心棒。

それでいて、たぶん一般の人が西部劇と言われて最初に想像するのは、このカメラアングル、音楽、世界観。
カウボーイブーツ越しに敵を写し、ピストル射撃を舐めて(カメラ越しに)撮影された画面のなかで敵が次々倒れる。セルジオレオーネ、クリントイーストウッドの代表作。

「RED SUN」1971年 フランス スペイン イタリア合作映画。
チャールズブロンソンは出てくるけど、シミひとつない白いシャツのウエスタン衣装のアランドロンと草鞋で侍姿の三船敏郎が流暢な英語で会話する不思議な映画。

もはや西部劇と言えるのかどうか。しかし意外にも史実に寄り添った世界観を提示する作品。西欧に派遣された伊藤博文以下の日本派遣団が現地で丁髷や裃や帯刀を異端視されて話題になり、新聞記事で揶揄されたことが廃刀令や丁髷の廃止に繋がったとも言われる。変化球的西部劇のひとつ。

「明日に向かって撃て」1969年 アメリカ
西部劇であると同時にアメカンニューシネマの代表作でもある。原題はブッチキャシディとサンダンスキッド。日本に例えれば坂本龍馬と西郷隆盛または、人斬り以蔵か。

ジョージロイヒルの傑作。かつての西部劇映画へのオマージュが随所に見られる。

西部劇を理解するには、アメリカを旅したときに本屋で、その頃の資料を探すと良い。ゴールドラッシュ、賞金首、名保安官、銃について、ジーンズについて、ゴーストタウンについて、など。
写真も文章も限りなく見ることができる。

バックグラウンドを知らずして西部劇を見ることは、例えれば封建社会や鎖国制度、身分制度や江戸時代と言うものををまったく知らずして時代劇を観るようなもの。
もちろん、普通に愉しむ分には何も問題ないが、映画的な論文を書くためのリサーチや作品制作の参考としてなら少し調べが必要になるだろう。

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